低迷続くヨーロッパ経済 底打ち確認まであとわずか?
日本、アメリカ同様、ヨーロッパ経済もリーマンショックの影響を強く受け、GDP成長率はあっという間にマイナスに転じて行きました。株式市場は、底打ちから回復への兆しを見せてはいるものの、マクロ統計等を見る限り、実体経済の回復にはまだ時間がかかりそうなのが現状です。先日、ユーロ圏財務相会合議長のユンケル首相兼財務相(ルクセンブルク)より「とりあえず、最悪期は過ぎた」とのコメントもありましたが、まさにその「とりあえず・・・」が、回復基調がなかなか見えないヨーロッパ経済の現状を、如実に表しているように思えます。
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回復度合いが強弱入り乱れた株式市場
他の主要国の株式市場と同様、欧州の株式市場も一様にリーマンショック後の世界的な株価暴落の影響を受けました。例えば、グラフのFTSE100は、9月12日の5,416.7ポイントから、3月までに約35%下落するなど、下落幅こそ日米より小さいものの、記録的な下げとなったことは間違いありません。
一方、日米の市場同様、2009年の春以降は少しずつ回復に向かっている各国の株式市場ですが、欧州全体を見渡して見ると、市場の回復度合いは各国で強弱まちまちです。リーマンショックから1年間での戻り幅を確認するために、2008年9月12日と2009年9月14日の指数を比較すると、FTSE100が-7.3%と、日米の約-16%と比べて大分良い実績となっています。一方CAC40は-13.9%、スイスSMIが-13.7%と、欧州の中でも市場回復の足並みが揃っていないことが見て取れます。
欧州の金融の中心とも言える英国市場が一番の戻りを見せていることに、若干の違和感はありますが、逆にサブプライムに関連した諸問題が英国では早くに表面化していただけに、株式市場の下落もリーマンショックよりかなり前から始まっていたようです。それでは、実体経済の方はどうでしょうか?
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回復が遅れるヨーロッパの実体経済
株式市場の回復と比べて、実体経済の回復が弱いのが、今の欧州経済の特徴かと思います。グラフからも明らかな通り、欧州経済は個人消費と企業の設備投資を主なドライバーに、政府の財政支出や輸出も後押しする非常にバランスの取れた形で、経済成長を続けて来ていました。しかし、リーマンショック以降は、それが一気に崩れた感があります。事実、世界の中でのコミットメントとも言える財政拡大をベースに、政府支出の成長を最後の砦としつつも、その他全要素がマイナス寄与となっており、特に設備投資と輸出について、そのマイナス幅が大きいことが見て取れます。一説には、底打ちは第3四半期の終わりとの観測もあり、回復軌道に乗るのかどうか、まだ予断は許せません。
政策面では、2008年末に「欧州経済回復計画」が承認され、EUのGDPの1.5%に相当する2,000億ユーロの拠出が決まるなど、まずは景気回復という共通の目標に向けて、歩調を合わせています。ただ、実際の回復が見えてくると、加盟国それぞれに異なる財政事情や雇用環境などが、共同歩調を取る足かせにもなりかねず、これからがEUとしての本領が問われるところです。
回復遠い輸出 鍵は対中貿易か
輸出入の成長率を比較したグラフは、日本、アメリカの同様のグラフと全く同じ動きをしています。やはり転換点は2008年9月。ここから世界市場が一気に縮んだことが、日米欧全てのグラフからの結論として言えるかと思います。
一方、日米の同じ統計との比較で顕著なのは、欧州のトレンドがまだ引き続き下落方向にある点です(ただし、日米は月次データであることも注意)。やはり下落率そのものは日本より小さいとは言え、このグラフで底打ちを確認することが、欧州経済回復を占う上での鍵になるのでしょう。
さて、今後底打ちから回復に転じる上での一番の鍵となるのが、中国との関係です。EUの対中貿易赤字は、2001年の513億ユーロから2008年の1,692億ユーロへとここ数年で急増しており、EUの対中貿易赤字問題は、米中間と同等の深刻さを輸しています。一方で、EUからの輸出額自体は、人口13億人の中国に対する輸出が、人口750万人のスイスに対する数字にも及んでおらず、対中輸出の潜在性は非常に大きいと考えられます。既に「EU・中国ハイレベル経済貿易対話」等で、閣僚級の対話は始まっており、企業の自助努力も含めて中国市場をいかに大きく、いかに早く開拓できるかどうかが、今後のEUの貿易を考える上での大きなポイントになりそうです。
回復の兆しが見える企業の生産活動
純輸出の下振れ以上に、ここ2四半期のGDP成長率低迷の要因になっていたのが、企業投資でした。その今後の動向を占うために、欧州の産業指数についてグラフで確認してみると、2009年第2四半期での回復の兆しを見て取ることが可能です。これには、ドイツ、イタリア、フランス等での自動車新車買替え補助制度などで、自動車産業が回復したことが一つの大きな要因になったと考えられます。事実、2009年6月に、欧州全体での新車登録台数が14ヶ月ぶりに対前年比プラスとなるなど、政策的後押しが自動車産業の目先の回復に一定の効果を示しています。一方、これら政策的後押しは、ともすると需要の先食いにも繋がりかねず、持続性に注意が必要なことは言うまでもありません。
2009年9月に発表された、7月のドイツ製造業受注が5ヶ月連続のプラスを記録するなど、自動車産業からの製造業景気回復の兆しも一部見え始めており、この傾向が欧州全体に、雇用の拡大と共に広がるかどうかが、欧州復活を確認する上でのポイントになるでしょう。
勝ち負けが明確化してきた金融業界
欧州各国の市場やマクロ経済の回復状況が異なるように、欧州の各金融機関の業績動向にも明らかな差が生まれています。
サブプライムに深く手を染めていたUBS(【1】のグラフ)は、リーマンショックが起こる1年前から関連損失での赤字が続き、リーマンショックがその赤字傾向にさらに拍車をかけることになりました。事実、世界の他の大手金融機関が黒字に転じる中、2009年第2四半期も、クレジット関連損失やリストラ費用の計上で赤字決算となるなど、苦しい業績動向が続いています。
一方のバークレイズ(グラフ右下の【2】をクリック!)は、リーマンショックをものともしない安定した利益を誇っており、これを見るとリーマンを買収したことも大いに納得できます。2009年2月に発表された、2008年通期決算においても、評価損などでの81億ポンドの損失を、リーマン買収などに伴う利益等で補い、市場予測を上回る43.82億ポンドの純利益となりました。その一方で、経営幹部へのボーナス支給を行わないなど、米国の大手金融機関とは少し異なる動きも見せて、世界の注目を集めています。金融業への依存度が高いイギリスにとっては、自国経済回復のためにも、これら「勝ち組」金融機関の動きが大いに期待されるところでしょう。






